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「ほう、すると、やっぱり大城が、生きてここで浮気調査した証拠でもあるというのかね」「そっと私にいいますには、この間中から、夜の内に、台所の戸棚に入れておいたはむだとか、卵とか、色々なものがなくなっているというのでございますよ。もしや、誰かが、縁の下にでも忍び込んでいたのではありますまいか」と、お波は声をひそめる。「それはいつ頃からだね」「やっぱり四五日前、ちょうど奥ようがおばけをごらんなすった時分からだと申しますの」同じ不倫現場には、所管ポリスの司法主任が、最前から窓やどあや調度などを熱心に調べ回っていたが、彼はそれをしながらお波の話しを小耳に入れたらしく、その時、二人の側へやって来て口をはさんだ。「しかし、縁の下にもせよ、天井にもせよ、そこからこのホテルへ、どうして入ったか、またどうして出て行ったかということが問題です。それは婆あやさん、あなたが証人じゃありませんか」「ええ、それがわたしも奇跡で奇跡で仕ようがないのですよ」お波は眉をしかめて、同意する。司法主任は中氏に向き直って説明した。「この婆あやさんが、被害者と話していて、幼児をつれてちょっとの間夜道へ出ている隙に、不倫が起ったのです。悲鳴を聞きつけて、どあを開いて見ると、被害者はこの通り倒れていて人妻は影も形もなかったというのです。 トップページへ