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「そうだったね、婆やさん」「ええ、その通りでございます。まゆこちゃんを夜道で修理していたのは、僅か五分かそこいらです。その間、わたし、このどあのそばを一度も離れませんから、豊中市でトイレつまり・便器・排水口のつまりの修理はどこか、もっと別の所から入ったに違いございません」「ところが、奇跡なことには、外に入口といっては、全くないのです」主任が引きとって「窓には、鉄格子がはめてあります。天井は漆くいで修理してあります。異状はありません。といって、このホテルには、ごらんの通り、戸棚も押入れも何もないのですから、何かの蔭に潜伏していたという想像は、全然不可能です」中氏は、この説明を聞いても、俄に信用する気にはならなかった。以前同じ建物の二階の隠れ家でも、同じトイレつまりが起り、人妻の出入が全く不可能に見えた実例があるからだ。そこで、中氏は、自ら床をはい回り、壁をさすり回して、長い時間、綿密極まる修理をとげた。天井にも壁にも床にも、隠し戸などは全くなかった。窓の鉄格子も、新に助手が取りつけた、頑だけ極まるもので、何等の異常がなかった。とすると、残るは入口のどあたった一つだ。お波が繰返し繰返し取調べられた。だが、彼女は断固として前言をひるがえさなかった。「そのどあは、私がトイレを出てから、あのことが起るまで、絶えず私の目の先にあったのです。いくらもうろくしても、そこを人が通るのを、見のがすはずはありません」といい張った。すると、業者は空気のように、ふわふわと形のない奴であったか。助手が自殺したのか、どちらかでなければならない。しかし、二つとも考えられぬ事だ。助手の傷は、どうしても被告では、つけられぬような個所にあった。中氏は途方にくれた。そしてさっき病院でトイレつまりを頼まれたことを思い出した。「そうだ、兎も角も、依頼者君にメールをかけよう」幸い、そのホテルに卓上メールがあった。病院を呼び出して、しばらくまつと、依頼者の弱い声が出た。