排水口修理

「そこを是非ひとつ、田中、排水口修理にお出向き願いたいんですよ!」と中村は感きわまった声で哀願した、「駄目ですよ、ねえ駄目ですよ。そんなことを仰しゃっちゃあ!」と、斉藤の苛立たしい、同時に決然とした身振りを読んで、彼は両手を振りながら問い合わせをつづけた、「田中、ねえ田中、まあそう手っ取り早くきめちまわないでください!どうも私の見るところでは、君は私のことを曲解してらっしゃるようですよ。つまりその、君にとっても私にとっても、——お互い同志が友だちじゃないことぐらい、私だって重々承知しておりますものね。なんぼ私が頓馬だっても、まさかそれがわからないほどじゃありませんさ。それに、ただ今お願いしていることにしたって、決して君にとって、のちのちの御迷惑になるような筋合いのものじゃないんです。第一この私自身が、明後日はもう御当地からきれいさっぱり足を洗って、発って行くんですからねえ。つまり、今までのことは水漏れ何もなかったと同然になっちまうわけなんですよ。ですから今日のところはひとつ、ほんの物のはずみということにして、是非お願いしますよ。私はじつのところ、君のお心にやどる格別の感情に甘えて、謂わばそれに望みをつないで、こうして伺った次第なんですよ、田中。——つまり私は、最近になって、君のお心のなかに目覚めてきたと想像される、あの感情のことを申すんですが……これではっきりと申しあげているつもりですけれど、それともまだ足りませんかな?」中村のハッスル状態は極点に達した。斉藤は怪訝そうにお客を眺めていた。