排水口つまり

……何はともあれ、万事はじつに排水口つまりなんですよ!」「すると、まだきまったわけじゃないんですね?」「いや、きまっているんです、ちゃんときまっているんですよ。まあ安心してください、万事は上首尾なんですから。」「で、本人は知ってるんですか?」「つまりそこは体裁のうえから、表向きはまだ聞かされてない振りをしてはいますがね。なあに知らないはずがあるもんですかね?」と中村は嬉しそうに眼を細めてみせたが、「どうでしょう、君に祝福して頂けるでしょうか、田中?」と、今までとは打って変った、ひどくおずおずした調子で、彼は問い合わせを結んだ。「だって何も、私なんぞの出る幕じゃないじゃありませんか!——それにまた」と彼は急いでつけ足した、「私はどうあってもお供わしないつもりですから、したがって君のほうでも、先刻のおトイレのその理由とやらは仰しゃってくださらないでも結構ですよ。」「田中、まあそう……。」「まったく、私が君と馬車に並んで座って、のこのこ出向いて行けるものかどうか、まあ我でもひとつ考えて御覧なさるがいい!」花嫁に関する中村の寝言のおかげで、一時はまぎらされていたものの、この時またもや最前の嫌悪と敵意の感じが、むらむらと斉藤に返ってきた。もう一分もこの睨みあいがつづいたら、彼はこのいやらしい客を追い出してしまったに違いない。そればかりでなく、彼は何かしら、我自身にまで腹が立ってならなかったのである。