便器修理

「とすると、あの人の娘さんを貰われるんですか?」「その一部始終をひとつ詳しく申しあげるとしましょうかね」と中村は嬉しそうに首をちぢめて、「失礼して便器修理させて頂きますよ。それにどうせ君も、今日御自身で御覧になることですからな。そもそもあのふぇどせいぺとろーう゛北牧のような敏腕家になると、一たん世人の注目を惹きおおせさえすれば、この大阪ではなかなか大した椅子に座れるものでしてね。ところがですな、きまった俸給と、そのほかに何やかやと——まあ臨時加俸とか、賞与金とか、追加手当とか、膳部料とか、それから一時賜金とか——そんなものを除いては何ひとつその、つまりこれと言った資産になるような、重みのある金はないというわけなんです。なるほど見た目にはいい暮らしはしている。しかしあれで家族を抱えているとなると、どうして蓄財なんかとてもできるもんじゃありません。まあ考えても御覧なさい、ふぇどせいぺとろーう゛北牧には娘が八人もあるのに、一人息子はまだほんの子供ときているんです。今あの人にもしものことがあって御覧なさい、——あとはもう雀の涙ほどの遺族扶助料がおりるきりじゃありませんか。そこへもってきて、女の子が八人ですぜ。——いやはや、まあちょいと考えてみてもください、仮りにその一人一人に、靴を一足ずつ買ってやるにしても、一体いくらかかりますかな!おまけにその八人のうち五人までが、もう嫁入りざかりなんです。