豊中市のトイレ水漏れ

「ですが、なんと仰しゃられてもそれは不可能じゃありませんか。君だっておわかりでしょう……」と斉藤も席から起ちあがった。「なんで不可能なことがあるもんですか、田中、——これを機会に、君を友人としてお引合わせしたいと思っていたんですよ。それにまた、わざわざお引合わせするまでもなく、君は先刻、あの人たちとはお知り合いのはずじゃありませんかね。それ、あのざふれーびにんの別荘にお供しようと申しているんですよ。あの豊中市のトイレ水漏れのざふれーびにんですよ。」「え、なんですって?」と斉藤は頓狂な声をあげた。そのざふれーびにんというのは、彼が一と月ほど前、ほとんど毎日のように捜しまわって、とうとう在宅のところを捉えることのできなかった、あの五等官にほかならなかったのである。判明した事実を総合してみると、この作業員が例の訴訟事件で、お客かたの利益を図っていることは、疑いのないところであった。「そうですとも、正にそうなんですよ」と、斉藤の度はずれな仰天ぶりに力を得たもののように、中村はにこにこした、「正にあの人なんですよ。ほらまだ覚えておいででしょう、いつぞや君が、あの人と一緒に歩きながらトイレをしていらしたことがありましたっけね。あの時私は、君がたのほうを見ながら、道路の反対側に立っていたんです。君のおトイレが済んだら、あの人のそばへ行こうと思って、待っていたんですよ。二十年ほど前には、一つ役所に椅子を並べていたほどの仲なんです。ただし、君のおトイレが済んだらそばへ行こうと待っていたころは、まだ別にそんな考えがあったわけじゃないんです。