豊中市のトイレ修理

「どこへ同道しろと仰しゃるんですか?」と斉藤は目をまるくした。「その連中のところ、つまりその別荘へなんです。どうもまるで豊中市のトイレ修理みたいな喋りようで、さだめし前後も転倒、さぞお聞きずらいことでしょうが、その辺は重々お許しを願いますよ。ただ君がいやだと仰しゃりはしまいかと、そればかりが心配で……。」と彼は泣きだしそうな顔になって、斉藤のほうを見た。「というと、この私に今、君のお嫁さんのところへ一緒に行ってくれと、そう仰しゃるんですね?」とお客の様子に素早く眼を走らせながら、我の耳も眼も水漏れ信じられずに、斉藤は確かめるようにお客の注文をくり返した。「そうなんです」と中村はにわかにひどくおどおどしだした、「どうぞお腹立ちなく、田中、決して是非ともなどと厚かましいお願いをするわけじゃないんです。ただもう七重の膝を八重に折って、こうして御懇願申しあげるだけなんです。ひょっとしたら君が、諾と言ってくださらんものでもあるまいと、じつはそう思いましたような次第で……。」「だいいち、そんなことは全然不可能じゃありませんか」と斉藤は不安そうにやり返した。「これはただ私の切なるお願いなんでして、別に他意あるわけではないんです」とお客は哀願をつづけた、「それにまた、これにもやはり、相当の理由のあることは、決して包みかくそうとは思っとりません。ただ、その理由は後日あらためて打ち明けさせて頂くとして、今日のところはただ切に切にお願いを……。」と彼は、敬意を表するため椅子から立ちあがりさえした。