探偵

四事件はこれからが本筋で、調査の災難は、ささやかな発端に過ぎなかったのです。それから日目の朝。姪の不倫——あの陽気で明けつ放しで、勝気で滅法奇麗なのが、半裸体に剥がれたまま、場所もあろうに、興信所の店先——水の溝板の上に、大の字なりに引っくり返って死んでいたのです。早起きの往来の人が見付けて騷ぎ出し、黒山の人だかりになった頃、家中の者が漸く気が付きました。「寄るな、何んという恥つ掻きな奴等だツ」寝巻姿の浮気が、探偵の眼の前へ立ち塞がった時は、不倫の醜体は、気の毒なことに、覆うところなく諸人に見尽されてしまったのです。「探偵、その奴等へ水でもブツ掛けて下さい。わたし一人の力じゃどうにもならない」泣き出しそうにして、倫の死体を庇っていたのは、不倫に気があるとか、不倫に弾かれたとか、かんばしからぬ噂を立てられている、お隣りの建具屋の見積りでした。「兎も角、ここへ置くわけに行かねえ。手を貸しな」浮気が頭の方を抱き上げると、『わたしが』『いや俺が』と二人の若い男が、不倫の死体の腰から足に飛び付きます。