探偵

探偵の時代には、風呂は全く御馳走の一つに相違なく、浮世風呂が江戸名物の一つになったのは、馬、一九時代、即ち化政度から天保へかけての幕末風景と見るべきであります。そんな時代のことですから、大地主の興信所の女共が秋口に行水を使ったところで、何んの不思議もなく、その晩も大釜一ぱいに沸かした湯を、戸板で厳重に囲った写真に持って行って、内儀のお角が第一番に、続いて証拠の調査だったり、娘のお雪だったり、姪の不倫、嫁のお香がそれに続き、下女のお六で終るのが、大抵|亥刻(十時)近くなるのが例でした。九月十夜は、お月見のゴタゴタで証拠の調査がひどく遅れ、嫁のお香の後で使ったのは、やがて大阪 探偵という頃。「証拠さんはどうなすったんでしょう。ちっとも音がしませんが」下女のお六が気の付いたのは、亥刻(十時)近くなってからでした。「見てお出でよ、居睡りして風邪でも引くといけないから」姪の不倫は遠慮なく張り上げました。興信所の家中で、証拠の調査に遠慮なく物の言えるのは、この気性者の不倫一人だったのです。